「キートン」は六本木ヒルズのけやき坂通りに、4月25日にグランドオープンした、日本では初となるメンズ・レディースを取りそろえたフラッグショップの路面店である。
今回の計画は「キートン」の本社ショールームのイメージをつくったドイツのデザイナー集団BRTアーキテクトンのつくるコンセプトを継承し、日本というフィルターを通して再構築および設計する作業をわれわれが受け持った。
まず、店舗の印象を特徴づけているのは、格子状のシリンダーが2フロアある空間を建てに突き抜けていることである。それぞれのフロアではそのシリンダー内が売り場として計画され、そのまわりにレジスペース、フィッティングルームなどの機能が配置されている。
またシリンダーに呼応するように水平のルーバーが階段を包み込む。
キートンの服はものをつくる上で、数多くの大切なことを教えてくれるように思う。端正さを保ちつつ、しかし堅苦しさを与えず艶があること。伝統を守りつつ、合わせて現代の空気感を取り入れること。また、芯地と服地の相性、アイロンによる馴らし、ボタンホールのかがりなど、細やかな作業の上にのみ存在できる優しさ。
相反する思いを同時につくりだし、細やかなデティールにより得られる柔らかさ。このことは何も服飾の世界に限っていえることではなく、建築の世界でもいえるのではないか。
そうした服のイメージが空間へにじみ出て、店自体の雰囲気がつくられることを考えた。
そうすることで空間自体がキートンの服へ袖を通した時と同じように、柔らかな感覚として存在できるように。