NOTES
2018年ミラノサローネ でヤマカワラタンから発表したスツールです。
ヤマカワラタンの籐製品の技術と信楽の陶芸の技術、東大阪の鍛鉄の技術がつくり出す手づくりの質感のある工業製品です。
有機的である人はものに対して、造形や機能性だけに惹かれるのでは無く、そのものを創る人や生まれる背景や物語に共感します。
手業で創る工業品である籐編みに陶器の窯変が創り出す偶然の色彩、鍛鉄によって生まれる表情の微かな揺らぎが寄り添う事で生まれる新しい伝統の表現。
自然の力を借りながら、丹精込めて丁寧に手業で創る工業品は、生き物を育てるかの様な暖かさ満ちています。
私にとってSOBACHOCO chairは、一緒にいる事で幸せになることができる「共に生活する生き物」としてあります。
蕎麦猪口
17世紀以前、猪口は上流階級の食事の時の向う付けに使われていました。江戸時代の初期頃からその手に馴染むデザインは徐々に日常使いの雑器として湯呑みや酒器として使われる様になり、麺類の流行によって蕎麦つゆを入れる様になりました。江戸時代のものは釉薬が底にまで塗られていますが、明治時代以降は量産を旨として底に釉薬は塗られていなかったりします。
窯変=炎の創る偶然のデザイン
陶磁器の窯変は、高温で焼成する窯内部の化学物質が反応し合いその表面に様々な色相が生まれることをいいます。特に薪を燃料とする薪窯ではこの傾向が強く、「火変わり」と言われ、ゆらめく炎は多様な色彩を陶磁器にもたらします。窯変を英語でaccidental coloring=偶然生じた色彩と訳されるように、まさに陶磁器のデザインは、デザインしきれない作為を超えた自然にできる仕上り偶然のデザインになるわけです。
金属の槌目 かすかな揺らぎ
槌目は、手業で金属の平板を立体に整形するときにできる紋様ですが、調理器具などではその表面積を広くし熱容量を高める効果があるがあります。また表面に起伏をつけることで汚れなどがつきにくく、手触りがよくプレーンな金属の冷たさがありません。また、緻密に整列された槌目にも手づくりの「かすかな揺らぎ」があって視覚的にも金属の持つ暖かで素朴な風合いを醸し出しています。
籐編み
籐は、軽さと柔らかさに対し強さという一見相反する特徴を持ちます。
このしなやかな籐の特性から籐編みは複雑な曲線加工ができ立体的で自由なデザインが可能です。しかし、複雑な製作工程から機械生産ができないのでそのほとんどを手作業で行います。