NOTES

商業ビルのワンフロアを住宅としてデザインさせていただきました。

大きく南と西の二方向に開かれた窓の外からはロケーションを取り込むことのできない喧騒があります。しかし、採光や風はこの開口部からしか取り込むことができません。そこで防音と断熱の対策に二重サッシュを設け、更に室内側を全て障子にして、光は取り込む方法を基本に構成しました。

「障子」和紙の層があるだけで柔らかい光が空間に充満すると共に、その障子の向こう側にある景色を抽象的に想像することができます。

白樺の積層合板を主材料にした天然素材で構成された空間は暖かで簡素な雰囲気で、最低限の間仕切りと可変可能な構造で構成されています。

これから如何様にも変化して行く家族の在り方を許容してくれる無垢の住宅は言い換えれば、素材そのものによって構成された「素」の空間です。この空間を構成する「素」の連続が創る包容力のある抽象性が、如何様にでも変わっていく若い家族の未来に向けた「記憶の画布」になります。