菱葺の寺

Rhombus temple

PHOTO : 繁田諭写真事務所/繁田諭

NOTES

保壽寺/菱葺の寺 Rhombus temple

仙台市の秋保温泉の程近く、山間の田園風景の中に曹洞宗 渓谷山 保壽寺はあります。

築125年余りの本堂の修復に合わせて、集会所(檀信徒会館)の増築のデザインをしました。御本尊であるお釈迦様と道元禅師、瑩山禅師 一仏両祖を仰ぐ曹洞宗の寺として地域の「精神的な拠り所」として存在する保壽寺は、先の東日本大震災の影響も受け修復を余儀なくされていました。隣接する庫裏を別棟に移築し、本堂の耐震補強を施した上で増築し、新たに集会所(檀信徒会館)を増築しました。

本堂のデザインは、築125年余りの建築の意匠を継承しながら、本来の寺の成り立ちを彷彿とさせる「祈りの情景」を伝統的技法である立体的な組み木細工の建具によって周辺の山並みの景色を本堂内に取り入れる形でデザインして、次の100年を目指します。本堂西側の位牌堂と東側の集会所(檀信徒会館)は、鋼板の菱葺で建築され、翼を広げた鳳凰のように本堂の両側に広がり、その銅板の仕上げはまるで後光のように本堂を包みます。外壁の菱葺に代表されるように、保壽寺の建築デザインには菱形がモチーフになっています。菱型文様は二方向の平行線が交差してできた形「菱形」を基本とする割り付け紋様です。この形自体は縄文時代の土器にも描かれており、自然発生的に生み出された幾何学文様と考えられます。その名称は水面に浮いた植物のヒシの葉の形に由来しているとも言われます。ヒシは栄養価も高く不老不死を得た仙人の食べ物として、また心臓の形や田んぼを表す四角形を引き伸ばす事で長寿を表現したともいわれ、「根源的な幸福」を祈念する紋様として様々な場面で使われているものです。

寺は本来地域の人達の拠り所としてあったものです。経済や商業とは別の軸のコミュニティです。障壁無く誰もが立ち寄れる環境を創ることが、新しい寺院のデザインではないかと思います。

SPECIFICATIONS

所在地
〒982-0242 宮城県仙台市太白区秋保町境野辺田山15
15 Sakaino Hetayama, Akiumachi, Taihaku-ku, Sendai City, Miyagi, 982-0242
撮影
繁田諭写真事務所/繁田諭
平面図