雪月花(renewal)

setsugekka

PHOTO : KOZO TAKAYAMA

SPECIFICATIONS

所在地
〒604-8083 京都市中京区三条通富小路西入ル中之町20 SACRAビル1F B1F
20 SACRA Building 1F B1F, Nakanocho, Nishiiri, Sanjo-dori Tominokoji, Nakagyo-ku, Kyoto 604-8083
WEBSITE
http://www.kyoto-setsugekka.com
竣工年
2021
階数
B1
フォトグラファー
KOZO TAKAYAMA

NOTES

『redesign -時代性と普遍性-』

『雪と花(雪月花)』

人は現実の中に非現実を見ることができる。そして、あり得ないものをあり得させる能力を持っている。「此処」はどんな奇跡も可能にする。雪を降らすことも、花を咲かすことも、あの日の月を見ることも、時間や空間を延ばしたり縮めたり自由自在なのだ。「此処」では、あらゆるものが現実の世界に居た時の姿とは別の形に作り直されて新しい命をあたえられる。あらゆるものの中から精を見、魂を見ようとだけする処。あらゆるものが、愛と美しかない、穢れたものや醜いものは一切ないすべてが幸福にしかなれない。「此処」は、しかも現実のとなりにある「此処」なのだ。

ー雪 静寂の音なき音に傾けて 無垢な身に積もる白雪

ー月 満月になれぬ月みて立ち止まる あしもとの石 名も無き仕事

ー花 草のような花 花のような草 そこにあること ここにあること

セッゼッション様式が特徴の擬洋風建築である旧不動貯蓄銀行京都支店(大正5年竣工)を1988年に「歴史的建築の動態保存」を目的とした商業施設『SACRAビル』としてリノベーションされました。開業当初1階にカフェ+地階にバーとして設けられた「雪月花」は、プラスチックスタジオから独立間もない水谷壮一さんがデザインされました。その洗練された光と影の作る上質なカジュアル空間(僅か12席のバーカウンター)に多くの人達が集まりました。その後、(6年後)1994年にバーに特化することを機に全面改装することになり、三つの異なる空間のbarとして当時リブアートに在籍していた私がデザインさせていただくことになりました。京都雪月花は、閉ざされた内部空間で季節感(自然)を感じさせる事をテーマに、鉄の庭を持つ可変する「月」、和紙の光壁による抽象的な借景を持つ光の庭の「花」、麻糸で表現した純白の素の空間「雪」の三つの空間の構成で、環境音楽も含め五感で物語(narrative)を感じる環境に話題を呼びました。

前出の文章は、当時のデザインコンセプトです。かたちにならない想念を一旦言葉に置き換え、形や素材、物質的なものから一旦遠ざけ自由に解き放ち、それを現実の熊手でかき集めるように実体化していく作業が私にとってのデザインで、そういった手法の創世記であったように思います。

開業から33年(私がデザインさせていただいてから27年)、商業施設にとってはとてつも長い時間が流れました。今回の改修は、設備の遣り替えに伴う意匠的なmergeが基本になっています。時代が進むことで、進化したテクノロジーによって当時はできなかった事ができるようになった。「花」の光壁は、基盤をアクリルから高透過ガラスに変え照明のLED化によってコンピューター制御による緩やかな変化によって、堀木エリ子作の手漉き和紙が浮かび上がり新しい表情を見せる。当時1994年オリジナルでデザインしたIDEEのcantileverの椅子は、クライアントの意向で懐かしさが新しい(?)椅子(マリオ・ベリーニが1977年にデザインしたCAB)と変わったが、それ以外は全く開業当初と同じコンセプトでリデザインした。

「リデザイン」とは、高度な次元で「完成されたデザイン」(最適解)を、さらに「最適化」することの意である。よって、先行する追求の結果に対して、その踏襲または否定、あるいは不備・不足を補完するだけの営為ではない。流行とは無関係でいれない商業空間のデザインでは、その時代のムードで表現されることが望まれます。それは、デザインがメッセージを伝える手段である以上、それを伝えるべく今を生きる人達の持つその時代の共通言語で語らなくては伝わらないことからです。しかし、一方では歴史や民族や文化を超えて人間の原初的な琴線に伝播する創造が存在することも信じています。時代性と普遍性、この両極の概念の特異点にこそデザインの真実が隠されているのではないかと思っています。

コンセプトは色褪せない。