北泉院 穴太積みの家/M邸

Hokusen-in Anoh Stacked house /M residence

PHOTO : 繁田諭写真事務所 繁田 諭

NOTES

京都洛北は100年前まで、賀茂別雷神社(かもわけいかづちじんじゃ:上賀茂神社)と賀茂御祖神社(かもみおやじんじゃ:下鴨神社)の間に広がるのどかな農村地帯でした。近代以降は住宅地として発展してきた地域で、大きな邸宅が立ち並びゆったりとした時間が流れています。

閑静な住宅街の一角に、仕事に区切りをつけられた知的で気品のあるチャーミングな女性とその家族が暮らす住宅を設計しました。

この家の名の「北泉院」は、白川通りから下鴨中通り間の北泉通りに由来しますが、北泉院の「院」は、高い垣に囲まれた御所、大きな建築のことをいいます。また、譲位により皇位を後継者に譲った上皇の尊号であるように止ん事無き御方そのものも指す様です。

光の降り注ぐ中庭を囲む回廊を中心に私的空間を確保配置し、もう一つ開かれた南側の庭との間にコミュニケーションスペース(リビング)設けました。四方を取り囲む石垣で街に対峙するプライバシーを確保すると共に、自然と共生しながら暮らす思想を主張しています。

この四方を囲む石垣は穴太積み、野面積みともいい自然石を自然のまま原型のまま組み合わせて積み上げていく日本古来の石積みです。頑丈であることはもちろん、ふたつとして同じ形のない石積みの景色は、時間を忘れるほど見ていて飽きないものになるに違いありません。

※伊勢物語、八十二段、渚の院

「今狩りする交野の渚の家、その院の桜、ことにおもしろし。その木のもとに下りいて、枝を折りてかざしにさして、上、中、下、みな歌よみけり。」惟喬親王の一行が「渚の院」で満開の桜の下で身分の上下にかかわらず、みんなで歌を詠みあう楽しげな風景を想像します。

SPECIFICATIONS

所在地
京都
KYOTO
竣工
2023年8月 1日
設計
辻村 久信 大貫 善哉 中村 知美
協力
建築設計 FLAT一級建築事務所 東 夕子
構造設計 村田龍馬設計所 村田 龍馬
施工
株式会社あめりかや 鈴木 克典
撮影
繁田諭写真事務所 繁田 諭
工事種別
新築
用途
個人邸
計画面積
560.44㎡
工期
2022年9月 2日〜2023年8月28日
施工協力
空調設備・給排水衛生設備 サンユープラント 塚本 眞一 
電気設備 古川電設 古川 和哉
照明計画 ウシオライティング 山田 隼人 
特注家具 有限会社 忠伸工芸 井上 隆広 
暖炉 株式会社メトス 高田 大
家具 FUTURA 岡田 好生 
ファブリック 有限会社カノン 寅野 かすみ
外構造園 株式会社 近江庭園 寺下 真司
マテリアル
外壁 モエン大壁+ジョリパッド左官塗り、木板貼り
外部石積壁 野面積み
屋根 平型屋根用スレート
外部床 土間コンクリート ピンコロ割肌 
床 磁器タイル、木質フローリング
壁 PBt12.5+9.5下地 AEP塗装、壁紙、左官
天井 PB12.5下地漆喰仕上げ AEP塗装、壁紙
平面図